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2012年7月27日 (金)

「善き人のためのソナタ」東ドイツ盗聴の恐怖

105 『善き人のためのソナタ』東ドイツのシュタージ(対外諜報機関)のエージェントを主人公にしたドラマで、当時の東ドイツが置かれていた監視社会の実像を克明に描いている。第79回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した。評価AA
 図書館で借りたDVDであるが、実によく出来た作品であった。実録ビデオかと思うほど、ハラハラした。東ドイツ政府系の監視機関が西の民主化思想持つ文化人、思想家を監視する。留守中に入り込み、監視相手の家にマイクを設置して、24時間担当官が聞き耳を立てその報告を毎日している。このように、東ドイツの監視は徹底している。

今後このDVD見る方には、あらすじを知らないほうがいいという考え方もありますが、あらすじは知って見たほうが理解が深まると思い、紹介します。

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119  1984年の東ベルリン、国家に忠誠を誓うヴィースラー大尉は、国家保安省(シュタージ)の局員である。ある日、反体制の疑いのある劇作家ドライマンとその同棲相手の舞台女優クリスタを監視するよう命じられる。
 さっそくドライマンのアパートに盗聴器を仕掛け、ヴィースラー大尉は徹底した監視を開始する。

★シュタージとは
 
1949年にドイツ民主共和国(東ドイツ)建国翌年、1950年には国家保安省(シュタージ=秘密警察組織)が創設された。その前身はナチス=ドイツ時代のゲシュタポや親衛隊情報部(SD)にあるとも言われている。シュタージは反体制派弾圧・監視をする、西ドイツ工作を行う対外諜報機関でもある。
 1989年のベルリンの壁崩壊時には
9万1千人の正規職員を抱えていた。ちなみに、ナチス=ドイツのゲシュタポの職員数は約7千人規模だった。しかも、いわゆる密告者・協力者を17万4千人擁し、人口1600万人余りの国に26万4千人もの監視員がいた。人口1700万人で計算すると、国民100人当たりにつき、1人以上はシュタージの監視者がいることになる。
 1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊し、12月にはシュタージ(国家保安省)は解散された。1990年に東西ドイツが統一されシュタージ機密文書の閲覧が可能になった。閲覧申請ができるのは本人のみ。過去の自分の監視記録を調べることができる半面、友人や同僚家族がシュタージの協力者・密告者であることが発覚することが少なくない
。(2009年5月28日付AFP通信)。

 1984年、冬のベルリン、ヴィースラー大尉は、優秀な国家保安省・通称シュタージと呼ばれる東ドイツ秘密警察の優秀な役人で、彼は、尋問のプロであるばかりでなく、後進の若者たちに大学で尋問の手法を講義する教官でもある。。
 主人公ヴィースラー大尉と共に学んだヴォルヴィッツは出世して、今や、国家保安省の中佐として、ヴィースラーの上司になっていた。上司となったヴォルヴィッツ中佐の交友関係は幅広く、大臣とも関係があり、ゆくゆくは党の中央委員会に登りつめるを目標にしていた。
 それに対して、部下になったヴィースラー大尉は、器用な人間でもなく、至って真面目で寡黙な人間で上層部へ登りつめる野心はない。ただ、自分の職務に忠実であること、そして東ドイツ政府を支える社会主義体制に忠実である。彼はそれら社会主義体制の信条に従い、シュタージ(国家保安省)の仕事に誇りを持って、人生を過ごしてきた。

 彼ヴィースラーが、ドライマンという作家の盗聴・監視任務を任されたことから人生の転機を迎えた。彼が、なぜ国家体制に反逆する「社会主義の敵」であるドライマンを救い、自らを窮地に陥る行為をしたのか。
 そこには彼らしい、一本筋の通った選択がああった。ヴィースラーは真面目に社会主義を信奉して、国家体制に何らの疑問も抱いていなかった。仕事の腕が一流だからこそ、今回の大仕事、作家ドライマン監視を任された。
 まず、盗聴器を仕掛けるために一昼夜ドライマンを監視し、部下を使って手際良く盗聴器を仕掛け、それからは、盗聴器を通し監視を続けた。ドライマンの生活を残らず報告書に書きとめ、上司のヴォルヴィッツに報告した。

113  しかし、監視対象ドライマンには、恋人、クリスタ・マリア・ジーラントがいたが、実は党の実力者ヘムプフ大臣の愛人だったのである。クリスタは恋人のドライマンが監視される以前から、国家保安省の協力者でヘムプフ大臣とも関係があった。
 ヴィースラー大尉の監視によって、この関係が明る104 みに出ることは、彼の上司ヴォルヴィッツにとっては重大な問題だった。今回のドライマンの監視作戦自体が、ヘムプフ大臣肝いりの作戦である。しかし、党の要職にある人物ヘムプフの私生活を公に暴くことは、ヴォルヴィッツの出世にとってマイナスになってしまう。
 そこで、ヴォルヴィッツは、部下のヴィースラー大尉の報告書を握りつぶし、「大臣に関する情報は文書でよこさないように」と念を押す。「私の出世、君の出世…協力しろ」と言ってヴィースラーに大臣に関する部分の情報を報告書から削除するように要求した。

 ヴィースラー大尉は、上司ヴォルヴィッツ中佐の態度に不信感を抱いた。彼は、友人でもあり上司のヴォルヴィッツに、入党の誓い「われらは党の盾と剣」の信念を思い出させようとした。しかし、ヴォルヴィッツは「私が党に入ったのは、有力者に取り入るためだ。」と、答えた。
 本当に「党の盾と剣」のために入党したなら、大臣が反体制派の監視対象関係者と関係を持っている事実は報告されべき情報のはず。それが、党の要職、大臣ならなおさらである。ヴィースラーはそう考えた。
 が、上司ヴォルヴィッツは違った。大臣を告発すれば、自分の出世の途が断たれる。出世のため、高官を監視することはできない、とヴィースラー大尉の考えを突っぱねた。

 ヴィースラー大尉は、党のため、社会主義国家のために働く、忠義の人であった。しかし、上司ヴォルヴィッツ中佐は自分の出世のために働いている。それは、ヘムプフ大臣も同じく、自分の欲望の赴くまま行動している。党の幹部たちは、東ドイツのため、社会主義のためではなく、出世や欲望を達成するために働いているという現実に接した。

 人間の世俗的な欲望によって、当初の崇高な目的は葬り去られた。
 ヴィースラー大尉は、今回の任務を通して、党が民衆のためではなく、出世欲や金銭欲によって動いているという現実に目を見開かされた。今まで、彼は国家のためと思い、反社会主義者に対する尋問は40時間が基本と言い切って任務をこなしてきた。しかし、党の幹部たちは自分のことしか考えていないのではないか。

 主人公ヴィースラーはこの現実を知ってしまったとき、自分の中で矛盾が生まれた。国家のためと、忠実に任務をこなしてきたヴィースラーであったが、上司ヴォルヴィッツ中佐からは、出世のために任務を曲げることを要求される。社会主義のためではなく、個々人の欲望のために、民衆を監視し、盗聴する。一体、自分は何をしているのか。彼は迷い始めた。

 そんなとき、愛人クリスタが大臣の車でドライマンの家に帰ってきた。監視対象のドライマンが「クリスタと大臣の関係」に気が付くように、ヴィースラー大尉は、仕向ける。案の定、ドライマンは黒塗りの高級車で帰宅するクリスタを見て、「苦い真実」を知る。

 しかし、監視対象のドライマンは、「クリスタが大臣の愛人であること」を責めも、問い詰めもせず、ただ、彼女のそばに寄り添った。ヴィースラー大尉はこの展開に拍子抜けしてしまった。視聴者である私も、嫉妬に狂うだろうが、このドライマンの胸中は崇高な精神なのか、苦しい胸のうちを秘めて耐えているか、分かりにくいが、監視社会ではの生きかたか。

 108 監視任務の交代の部下、ライエ軍曹が見たのは、眠っているヴィースラー大尉であった。毎日、何分遅刻だのと、勤務態度にうるさい生真面目なヴィースラー大尉らしからぬ姿であった。その夜、帰宅したヴィースラー大尉は、コール・ガールを部屋に呼び、つかの間の快楽ののち、ヴィースラーが味わったのは人恋しさであった。

 次の監視当番のとき、彼ヴィースラー大尉は監視対象のドライマンの部屋に忍び込み、彼の書斎に行き、雑然とした机の周りを徘徊し、乱れたシーツのベッドルームに行って、ベッドの端に触れてみる。そして、ヴィースラーは本を一冊持ち帰った。

 091 監視者であるヴィースラー大尉は、あえて「大臣とクリスタの関係」を知らせたから、ドライマンはクリスタと破局するだろう、と半ば期待していた。ところが、恋人に裏切られたドライマンはクリスタに怒ったり、彼女を追いだしたりせず、ただ2人で慰め合い、苦しむだけだった。ドライマンは黙ってクリスタを受け入れた。
 一方で、ヴィースラーには妻も、子供もいない。家族はない。ヴィースラーが買った娼婦は、仕事が終われば時間通りにさっさと帰っていく。彼はドライマンとクリスタの間にある愛情というものが、自分の考えていたものとは違うことに気が付く。
 
だだっ広い、綺麗に整頓された広くて清潔なアパートにヴィースラーは一人で住んでいる。そこには生活感がない。一方、ドライマンとクリスタが住むアパートの部屋には、本やペンが書斎机に雑然と置かれ、寝室のベッドは2人が朝起きたそのままになって、ヴィースラーの部屋とは対照的な散らかった部屋。
 そこには、誕生日プレゼントにもらった木製のサラダフォーク。これを"孫の手"と呼んでいた。プレゼントされたペン。このペンで次回作を書くつもりだと言っていた。
 ドライマンの雑然とした机の上にあったのは、この部屋には人間がいて、人間の感情がある暮らしの匂い、友人からの愛、恋人クリスタからの愛。人間の匂い、あるいは愛。ヴィースラーはそれらに触れ、人間の愛を感じた。監視対象者の部屋に忍び込み、本を一冊盗むというやってはいけないことまでした。

 主人公ヴィースラー大尉は、今度は監視対象のドライマンを理解しようとし始めた。自分にはないものをドライマンに見て、彼に人間的な魅力を感じるようになっていた。西側の文学、そして、それにドライマンたち芸術家が一体どのような思想を持っているのか。それを知りたかった彼は本を一冊拝借した。

 ヴィースラーは、それまで社会主義一辺倒で、それ以外の思想は劣ったものとして、知ろうともしなかった。ただ、上司ヴォルヴィッツ中佐ら党幹部の姿勢に一抹の疑念を持ち始めた。
 彼は、ドライマンの人生に理解を示したが、必ずしも、ドライマンたちの思想、西側の民主主義・自由主義思想に全面的に共鳴したわけではない。

 ヴィースラー大尉が知ったのは、監視対象のドライマンたち芸術家仲間は、自分の理念や信念にウソをついていないことであった。
 対照的に、上司ヴォルヴィッツら党幹部は、社会主義の理想を掲げながら、裏で自己利益を図ることに汲々としている。自分の理想に忠実なドライマンたちは、監視者ヴィースラー大尉の目に高潔に映り、彼自身の理想は、崩れかけようとしていた。
 人間として幸せなのは、
ヴォルヴィッツ中佐の生き方なのか、それとも監視対象のドライマンか。主義主張のために多くの人間が不幸になるならば、その主義主張には疑いの目を向けるべきである。主義主張のために、人間が犠牲になるとすれば、それはもはや本末転倒の結果になる、ということに気が付かねばならない。

  117 監視対象のドライマンの部屋から本を失敬してから間もなく、主人公ヴィースラー大尉は、ドライマンのアパートのエレベーターで小さな男の子に
「シュタージ(国家保安省)の人なの ? 」とたずねられ、さらに、「パパが(国家保安省は)皆を捕まえちゃうって言ってた」
 と聞かされ、かつてのヴィースラーなら、男118の子の父親を「社会主義の敵」として報告していたに違いない。しかし、男の子に名前を聞かず、結局見逃した。このときに、道は決まった。それは、この監視作戦からドライマンを助けるという選択であった。

 それには、先、彼は部下のライエ軍曹を監視任務から外した、ドライマン監視作戦を自分の単独任務とし、報告書に虚偽の事項を記載して、ドライマンには"反体制的"な特記事項がないと報告した。さらに、ドライマンの愛人クリスタから、証拠品のタイプライターの隠し場所を吐かせ、クリスタを釈放した。さらに、先回りしてタイプライターを隠し、ドライマンを救う。これで2人とも助けることができるはずであった。

Ws000095_2  そこで、彼はクリスタの尋問の際、
「ファンがいることを忘れるな」「ファンだって(舞台で)待っている」
と二回ファンという言葉を繰り返した。ファンとは、かつて酒場で一ファンとしてクリスタに話しかけたヴィースラー自身のこと。「ファンがいることを忘れるな」とは、ファンがステージに立つクリスタを待っているという意味と、ファンの一人であるヴィースラーがクリスタを助けるという二重の意味が含まれていた。

 ドライマンは、クリスタが自宅に戻った後、隠し場所をクリスタが自白したことを悟り、そして、彼の目が鋭くクリスタを見る気づき、彼女は急に道路に走りだした。そのままトラックの前に飛び出して命を絶ってしまった。

 これは、主人公ヴィースラーにとって青天霹靂の出来事。慌ててクリスタに駆け寄り、
「何も償うことなんてなかったのに」とつぶやくヴィースラー。
「弱い私は償いきれない過ちを犯してしまった」とクリスタは言って死んだ。

 証拠になるタイプライターは、ヴィースラーが事前に持ち出し、「隠し場所にタイプライターがない」と上司ヴォルヴィッツが気が付く前にクリスタは死んだ。もし、「タイプライターが隠し場所になかったことを知ったら」クリスタは自殺することを思いとどまっていたか。これは疑問。

094  クリスタは、既に大臣を裏切り、何らかの処分を受ける可能性があり、上司ヴォルヴィッツも、大臣からクリスタを処罰するように命令されただろう。タイプライターが見つからず、クリスタの供述がウソだったと思われ、虚偽の証言をした罪で、再びクリスタは拘禁された可能性がある。
 クリスタが自殺したのは、何よりドライマンを裏切ったからだ。その激しい罪悪感が決定打となった。クリスタはヴィースラーの尋問の真意を知った上で、タイプライターの隠し場所を自白したのかもしれない。仮にそうであっても、クリスタはドライマンを裏切ったことに違いはない。

 クリスタの言う、「償いきれない過ち」とは、ドライマンの信頼を裏切る、という取り返しのつかない行為をしてきたことを意味するだろう。
 彼女は今回の事件が起こる前から、国家保安省の情報提供者として登録しており、"マルタ"という暗号名まで残っていた。彼女はタイプライターの件よりはるか前から、ドライマンのみならず、ドライマンの友人たち、クリスタ自身の友人たちに対しても裏切り行為を働いていた。
 クリスタの死は、もはやタイプライターが見つかったか、どうかは、問題ではない。クリスタはドライマンのみならず、愛する人たち・友人たちを裏切ってきて、自らの行為にもはや耐えきれなかったのだ。参照
参考あらすじは、私の判断で手を加えました。

 人間を限界まで追い詰めた、東ドイツの監視社会の罪の深さを考えた。この「善き人のためのソナタ」は、若者たちに一回は見させて、考え方の深みをつけるために見てもらいたい。
 シナリオ作家にも、この作法は見習ってほしい。時間順にシナリオが書かれて、カットバックや回想シーンはないから、ストーリーがストレートに伝わる。内容の難しさを難しい印象を与えない。

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