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2010年6月 4日 (金)

「浮雲」原作林芙美子 主演高峰秀子

012752012750 林芙美子の作品は、彼女の生い立ちと社会背景が綿密に書かれている。その社会描写が群を抜いている。記録にもなる。成瀬巳喜男監督(岡本喜八チーフ助監督)1955年作品

012754 この「浮雲」は、最初昭和18年(1943)ベトナム(仏印)の日本人社会が描かれている。日本が空襲で疲弊しているとは大違いだ。戦時中ベトナムへ農林省から派遣されたキャリア官僚森雅之、タイピスト高峰秀子、二人の現地の恋愛。高峰秀子の若き姿、一見の価値あり。それが日本へ引き上げ後、彼の家へ訪ねていく。若い娘が来て家人に疑いの目で見られたが、「農林省のお使い」と言って彼を誘い出す。久しぶりに会う高峰秀子の二人にだけ通じる表情、それがよく出ていた。そして、再びドロドロの関係が林芙美子の目を通して描かれている。

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Ukigumo_poster 米兵のオンリーをやる高峰秀子、新興宗教で金儲けする男山形 勲、ボルネオから引揚げて質屋をやる加藤大介、もう没してしまった名優たちの演技が戦後の世相を表現していた。

高峰秀子 (幸田ゆき子)
森 雅之  (富岡兼吾)
中北千枝子(妻・邦子)
木村貞子 (母)
岡田茉莉子(おせい)
加東大介 (向井清吉)
山形 勲 (伊庭杉夫)
瀬良 明 (太田金作)
金子信雄(仏印の所員・加納)
千石規子(屋久島のおばさん)
大川平八郎(比嘉、鹿児島の医者)
ロイ・ジェームス (米兵)

022746022696 戦中戦後の日本の社会を見るには、主観的ではあるが、いい資料だなと思うほど、綿密に書かれている。モノトーンに描かれた昭和20年代、闇市やパンパンをやらないと食っていけない女の生き方は、資料からは探りえない。今、パンパンは差別用語だから使えないかも。

022679022676 戦後昭和21年とか、22年あたりの日本社会は白黒映画で描かれると、こんなふうだったか、と思ってしまう。「新興市場」と書かれた看板を見て、あのころ、みんな精一杯生きていたんだ、そんな一生懸命さを痛感する。

森雅之の役どころは、有能な農林省のキャリア官僚で美男子。きっと、毒舌で女に冷たい扱いをするのだが、気になる男で、女がみんな引きつけられて、彼自身、女はいくらでもいる、と思っている男。妻を泣かせる浮気もので、その彼が、生活に窮していきながら、女にはいい加減。

022681022671小説も「浮雲」とあるが、本当は「浮気」とするべきではないか、と思うほど、知り合う女はみんな森雅之に引かれていく。こんな都合のいい女をモノにしていくってありえないだろうに。原作者林芙美子の男遍歴からか、被害妄想な部分が描かれているのだろう。

022687022703 女は女で、男を自分に向けるために一生を費やしてしまうのかもしれない。男は、女をモノにするためには「女房と別れる」と、つい口説き文句として使ってしまう。それを風貌のいい男がつかうと、女は理性を失い、常識を吹っ飛ばしてチャンスだと攻めてくる。片思いの妄想が育っていく。

具体的な名や地名は伏すとして、(数年前に知ったが)例えば、Iさんは好きなS君の家の前で夜中まで立ち尽くしていた。今で言えば、ストーカーだが、そうやって思いを遂げる。結構素敵なIさん、思いを遂げて、隣り町をラブラブで歩いているシーンを見た(これは数十年前の事実)ことがある。両方を私は知っているから、彼らは困っ顔に見えた。

022709女の怖さはここからだ。体を武器にして、男を縛る道具にして結婚を迫るのは、女のイロハ、ABCだ。コレを知らないで、女に手つけたら、男はトラップにかかったようなもの。これを振り切るには、相当の非情でないと逃げられない。それを森雅之の役は、モトモトもてる男だから、高峰秀子は自活できる女なのに、振っても振っても、彼を忘れられない。もてない輩から見ると、男冥利につきる。しかし、林芙美子がこの主人公だったら、「重たい」女だ。

余談だが、男と女の関係も、ある時期過ぎると、憑き物が落ちたように女も男に関心がなくなる時期がくるように見える。社会的な制約なのか、肉体的な欲が欠けてくるのか、その辺は私にはわからないが。

女房を亡くした森雅之、葬式する金もなく、インチキ新興宗教でカネ儲けている男(義兄)の世話になっている高峰秀子に金を借りにいく。

高峰秀子は森雅之を忘れられなく、お金30万円持ち出して、伊香保温泉へ行き、電報で森雅之を呼び出す。「来なければ死ぬ」と電報を打って、女中は文面を見て驚く。30万円は、今の100倍の物価なら3000万円か。

032731032735 農林省の天下り先にしては、あまりいい職場ではないが、再起するために、屋久島へ転勤するというのに、高峰秀子は付いていく。

032738 当時の流行り病か、結核を起こして、鹿児島で待つ間に病が悪化して、屋久島の雨の多い気候で着任して短日で死亡する。「女はいくらでもいる」と悪態をついていた森雅之であったが、高峰秀子の遺骸の横で号泣しているシーンで終わり。

二十四の瞳YouTube 高峰秀子を思う

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Imagesca9eqswk林芙美子:1918年(大正9年)(15歳)文才を認めた訓導の勧めで尾道 市立高等女学校へ進学した18歳のときから『秋沼陽子』の筆名で、地方新聞に詩や短歌を載せた。
1922年(19歳)、女学校卒業直後、遊学中の恋人を頼って上京し、下足番、女工、事務員・女給などで自活し、翌1923年、卒業した恋人は帰郷して婚約を取り消した。9月の関東大震災を、3人は暫く尾道や四国に避けた。この頃から筆名に『芙美子』を用い、つけ始めた日記が『放浪記』の原型になった。
1924年、親を残して東京に戻り、壺井繁治、岡本潤、高橋新吉、小野十三郎、辻潤、平林たい子らを知った。同棲しては別れることを繰り返した。
1926年(23歳)、画学生の手塚緑敏(まさはる、通称りょくびん)と結婚をした

1928年(昭和3年)10月から翌々年10月まで20回、自伝的小説『放浪記』を連載した。1929年6月には詩集『蒼馬を見たり』を自費出版した。『放浪記』は好評で、1930年改造社刊行の『放浪記』と『続放浪記』とは、昭和恐慌の世相の中で売れに売れ、芙美子は流行作家になった。印税で中国へ一人旅した。1931年11月、朝鮮・シベリヤ経由でパリへ一人旅した。既に満州事変は始まっていた。金銭の余裕があれば旅に出て、向こう見ずな単独行を怖じなかった。ロンドンにも住み、1932年6月に帰国した。

1937年の南京攻略戦には、毎日新聞の特派員として現地に赴いた。1938年の武漢作戦には、内閣情報部の『ペン部隊』の紅一点として従軍し、男性陣を尻目に陥落後の漢口へ一番乗りした。「共産党にカンパを約した」との嫌疑で、1933年に中野警察署が留置された。活発な文筆活動を続けながら、1940年には北満州と朝鮮に行った。1941年には、自宅を下落合に新築し、飛行機で満州国境を慰問した。『放浪記』『泣虫小僧』などが発売禁止処分。

 太平洋戦争前期の1942年10月から翌年5月まで、報道班員として仏印・シンガポール・ジャワ・ボルネオに滞在した。戦局が押し詰まって出版界も逼塞し、1944年4月から、綠敏の故郷に近い長野県の上林温泉、次いで角間温泉に疎開した。林芙美子文学館になっている。
 芙美子は、下落合の自宅は空襲を免れ、1945年(昭和20年)10月に帰京した。1949年から1951年に掛けては、9本の中長編を並行に、新聞・雑誌に連載した。

1951年(昭和26年)、6月26日の夜分、『主婦の友』の連載記事のため料亭を2軒回り、帰宅後に苦しみ、翌27日払暁心臓麻痺で急逝した。『ジャーナリズムに殺された』と、世間は言った。『純徳院芙蓉清美大姉』。享年47歳。生前、色紙などに好んで、『花の命は短くて苦しきことのみ多かりき』と書いた。芙美子を支え続けた夫緑敏は、彼女の文業の整理に長く協力して、1989年物故した。

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    コメント

    私もずっと「浮雲」が観たいと思っているのです。どこにもDVDは売っていないし、どうしたらいいんでしょうか…
    知っていたら教えてください。よろしくお願いします。

    投稿: なお | 2010年6月 5日 (土) 13時23分

    なお様
    それは簡単です。古いDVDは、公立図書館で借りればいいのです。その図書館に所蔵していない場合は、東京都なら同じ区内の図書館から探してくれます。その区にない場合は23区の図書館から探してくれます。
     まず、図書館員に聞いてみることです。
     いつも、当ブログを読んで頂き、ありがとうございます。これからも、よろしく。

    投稿: nozawa22 | 2010年6月 5日 (土) 23時01分

    「浮雲」についての文章を読ませていただきました。
    鋭い批判の眼を読みとります。
    しかし、この小説のプロットの紹介はもう少し、正確であってほしいものです。
    たとえば富岡とゆき子が伊香保温泉に出かけるくだんの場面などは、原作とは余りにもかけ離れたものです。
    これでは、原作者にも失礼なことになります。それに原作を読まない読者を翻弄させるもとにもなりかねません。
    ご注意いただきたいものと思います。
    折角書かれた文章が、活きません。

    投稿: 由良 力 | 2012年7月14日 (土) 14時32分

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